第1 総説
介護分野の有効求人倍率は、近年一貫して上昇を続けており、2017年度においては3.64倍と、全平均の1.54倍と比較し、2ポイント以上高い水準にあります。
これは介護業界における求職者1名に対して3.64もの求人数があることを意味し、深刻な人手不足の状況です。
特定技能1号での介護人材受け入れは、他の方法(技能実習、在留資格「介護」、EPA)を大きく上回る6万人
介護分野は、近年の人手不足の深刻化を受けて一足早くざまざまなルートでの外国人労働者の受け入れが始まっていますが、まとまった数の受け入れにはつながっていません。これに対し、特定技能1号での介護人材の受け入れは6万人を予定しており、圧倒的なボリュームとなっています。
在留資格「特定活動(EPA)」:752名
経済連携協定(EPA)は、介護分野における外国人材の受入れ制度として最も歴史が古く、2008年に開始されています。以来、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国から合計で4265人を受け入れてきました。
EPAで受け入れた介護福祉士候補者には在留資格「特定活動」が付与されますが、2017年度の実績では752人です。
そしてEPA介護福祉士候補者のうち、2016年度の介護福祉士試験合格者の数は104名となっています。
在留資格「介護」(2017年9月施行):177名
介護福祉士試験の合格者が対象の在留資格「介護」の取得者は、制度導入直後であることもあり2018年10月時点で177名となっています。
在留資格「技能実習」(2017年11月施行):247名
介護分野の技能実習の受け入れは、2018年5月に中国人女性2名が初めて認定され、第一号が誕生したばかりです。2018年10月末時点では247人が介護技能実習生として来日しています。
1.特定技能2号が認められていない介護業
介護業は、特定技能1号の対象となりましたが、特定技能1号は日本での就労が通算5年に限定されています。したがって、他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできませんので、外国人労働者がどんなに優秀であっても、定年まで勤めてもらうことはできません。
もし今後、介護業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用することもできますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、介護業は含まれていません。
介護に特定技能2号が認められなかった理由としては、介護業界にはすでに更新に制限のない在留資格「介護」が設けられているためと説明されています。その代わり、介護福祉士試験に合格し登録すれば、特定技能1号から在留資格「介護」への変更が可能です。
2.介護福祉士試験に合格すれば、永住への道も
介護分野では特定技能2号が認められませんでしたが、その代わり介護福祉士試験に合格すれば、在留資格「介護」への変更が可能です。厚生労働省の社会・援護局長が明らかにしたところによると、特定技能1号で5年働かなくとも、3年働いた後に介護福祉士試験に合格すれば、在留資格「介護」への変更が認められる方向で議論が進んでいます。
介護福祉士試験への合格はなかなかハードルが高いですが、合格することができるだけの優秀な人材は、その後、日本に永住して介護職を全うする道が開けることとなります。
第2 特定産業分野において認められる人材の基準
1.技能水準及び評価方法等(特定技能1号)
(1)「介護技能評価試験(仮称)」(運用方針3(1)ア関係)
ア 技能水準及び評価方法
(技能水準)
当該試験は、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の
状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベルであることを認定するもので
あり、この試験の合格者は、介護分野において、一定の専門性・技能を用いて即
戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認める。
(評価方法)
試験言語:現地語
実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:国外:年おおむね6回程度
開始時期:平成31年4月予定
イ 試験の適正な実施を担保する方法
同試験は、試験実施に必要な設備を備え、国外複数か国及び国内で大規模試験
の実施実績があり、かつ、替え玉受験等の不正を防止する措置を講じることがで
きる試験実施団体を選定することで適正な実施が担保される。
(2)「介護福祉士養成施設修了」(運用方針3(1)イ関係)
(技能水準)
介護福祉士養成課程は、介護福祉の専門職として、介護職のグループの中で中
核的な役割を果たし、介護ニーズの多様化等に対応できる介護福祉士の養成を図
るものであり、介護福祉士養成課程の修了者は、介護分野において、一定の専門
性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと
認められることから、運用方針3(1)アに掲げる試験の合格と同等以上の水準
を有するものと評価する。
(評価方法)
介護福祉士養成課程は、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和 62 年法律第 30 号)
第 40 条第2項第1号から第3号までに基づき、教育内容等に関する一定の指定基
準を満たす専修学校等を都道府県知事等が指定する仕組みとなっており、当該課
程の修了者であることを卒業証明書等で確認・評価する。
(3)国内試験の対象者
国内で試験を実施する場合、①退学・除籍処分となった留学生、②失踪した技能
実習生、③在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者、④在留資格「技
能実習」による実習中の者については、その在留資格の性格上、当該試験の受験資
格を認めない。
2.日本語能力水準及び評価方法等(特定技能1号)
(1)「日本語能力判定テスト(仮称)」(運用方針3(2)ア関係)
ア 日本語能力水準及び評価方法
(日本語能力水準)
当該試験は、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を判定す
るために国際交流基金が開発・実施する試験であるところ、これに合格した者に
ついては、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するもの
と認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価する。
(評価方法)
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成 31 年4月から活用予定
イ 試験の適正な実施を担保する方法
同試験は、試験実施に必要な設備を備え、国外複数か国で大規模試験の実施実
績があり、かつ、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じることができる
試験実施団体に業務委託することで適正な実施が担保される。
(2)「日本語能力試験(N4以上)」(運用方針3(2)ア関係)
ア 日本語能力水準及び評価方法
(日本語能力水準)
当該試験に合格した者については、「基本的な日本語を理解することができる」
と認定された者であることから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程
度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本
語能力水準を有するものと評価する。
(評価方法)
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回
から2回実施(平成 29 年度)
イ 試験の適正な実施を担保する方法
同試験は 30 年以上の実績があり、また、国外実施における現地の協力団体は各
国の大学や日本語教師会といった信頼性の高い団体であり、主催団体が提供する
試験実施マニュアルに即して、試験問題の厳重な管理、試験監督員の研修・配置、
当日の本人確認や持ち物検査の実施等、不正受験を防止する措置が適切に講じら
れている。
(3)「介護日本語評価試験(仮称)」(運用方針3(2)ア関係)
ア 日本語能力水準及び評価方法
(日本語能力水準)
上記(1)又は(2)の試験により、ある程度日常会話ができ、生活に支障が
ない程度の日本語能力を有することを確認の上、「介護日本語評価試験(仮称)」
を通じ、介護現場で介護業務に従事する上で支障のない程度の水準の日本語能力
を確認する。
(評価方法)
実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:国外:年おおむね6回程度
国内:未定
開始時期:平成 31 年4月予定
イ 試験の適正な実施を担保する方法
同試験は、試験実施に必要な設備を備え、国外複数か国及び国内で大規模試験
の実施実績があり、かつ、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じること
ができる試験実施団体を選定することで適正な実施が担保される。
(4)「介護福祉士養成施設修了」(運用方針3(2)イ関係)
(日本語能力水準)
介護福祉士養成施設については、留学に当たり、日本語教育機関で6か月以上の
日本語の教育を受けたこと等が求められることに加え、入学後の2年以上の養成課
程において 450 時間の介護実習のカリキュラムの修了が求められること等から、当
該介護福祉士養成施設を修了した者は、運用方針3(2)アに掲げる試験の合格と
同等以上の水準を有するものとし、上記(1)又は(2)及び(3)の試験を免除
する。
(評価方法)
介護福祉士養成課程は、社会福祉士及び介護福祉士法第 40 条第2項第1号から第
3号までに基づき、教育内容等に関する一定の指定基準を満たす専修学校等を都道
府県知事等が指定する仕組みとなっており、当該養成課程の修了者であることを卒業証明書等で確認・評価する。
第3 その他特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項
1.1号特定技能外国人が従事する業務
介護分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事する業務は、上記第1の試
験合格等により確認された技能を要する身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入
浴、食事、排せつの介助等)の業務をいう。
あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:お
知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等)に付随的に従事することは差し支えない。
また、1号特定技能外国人の就業場所は、技能実習同様、「介護」業務の実施が一般
的に想定される範囲、具体的には、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介
護」の実務経験として認められる施設とする。
2.従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性
「介護職種・介護作業」の第2号技能実習を修了した者については、当該技能実習
で修得した技能が、1号特定技能外国人が従事する業務で要する技能と、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程
度実践できるレベルとされる点で、技能の根幹となる部分に関連性が認められること
から、介護業務で必要とされる一定の専門性・技能を有し、即戦力となるに足りる相
当程度の知識又は経験を有するものと評価し、上記第1の試験等を免除する。
3.特定技能所属機関等に対して特に実施を求める支援
特定技能所属機関において、受け入れる1号特定技能外国人に対し、WEBコンテ
ンツ等を活用した介護の日本語学習、介護の質の向上に向けた介護の研修受講を積極
的に促す。
4.特定技能所属機関に対して特に講じる措置
(1)「介護分野特定技能協議会(仮称)」(運用方針5(2)イ及びウ関係)
厚生労働省は、介護分野の特定技能所属機関、特定技能所属機関を構成員とする
団体その他の関係者により構成される「介護分野特定技能協議会(仮称)」(以下「協
議会」という。)を組織する。
協議会は、その構成員が相互の連絡を図ることにより、外国人の適正な受入れ及
び外国人の保護に有用な情報を共有し、その構成員の連携の緊密化を図る。
また、特定技能所属機関は以下の事項について必要な協力を行う。
① 特定技能外国人の受入れに係る状況の全体的な把握
② 問題発生時の対応
③ 法令遵守の啓発
④ 特定技能所属機関の倒産時等における特定技能外国人に対する転職支援
⑤ 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析等
(2)厚生労働省又はその委託を受けた者が行う調査等に対する協力(運用方針5(2)エ関係)
特定技能所属機関は、厚生労働省又はその委託を受けた者が行う一般的な指導、
報告の徴収、資料の要求、意見の聴取又は現地調査等に対し、必要な協力を行う。