目次

第1 総説

2019年4月から、入管法が改正され人手不足が深刻な外食産業においても外国人の就労が解禁される予定です。これまでも多くの留学生が週28時間の制限の下に外食産業で働いてきたところですが、アルバイトではなく、フルタイムの雇用が可能になります。それを可能にするのが、あたらしい在留資格「特定技能1号」です。
在留資格「特定技能1号」は、日本での就労目的の滞在が通算5年に限定されています。したがって他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできません。
もし今後、外食産業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用することができるようになりますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、外食産業は含まれていません。
また外食産業は技能実習制度の対象とされていないため、他の業種のように技能実習との使い分けを考える必要もなく、特定技能1号をどのように活用するかが検討の対象となります。
外食ベトナム人特定技能を訓練
外食ベトナム人特定技能を訓練

第2 特定産業分野において認められる人材の基準

1.技能水準及び評価方法等(特定技能1号)

(1)技能水準及び評価方法

(技能水準)
当該試験は、飲食物調理、接客及び店舗管理の業務を行うのに必要な能力を測る ものであり、これは、食品衛生に配慮した飲食物の取扱い、調理及び給仕に至る一 連の業務を担い、管理することができる知識・技能を確認するものである。この試 験の合格者は、運用方針5(1)の業務において、一定の専門性・技能を用いて即 戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認める。
(評価方法)
試験言語:現地語及び日本語
実施主体:公募により選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパ ーテスト方式
実施回数:国内及び国外でそれぞれおおむね年2回程度実施予定
開始時期:平成31年4月予定
なお、受験者は、申請時に飲食物調理主体又は接客主体を選択することができ、 その場合、選択に応じて配点について傾斜配分を行うことを可能とする。

(2)試験の適正な実施を担保する方法

同試験は、試験実施に必要な設備を備え、写真付き本人確認書類による本人確認 の方法により、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じることができる試験 実施団体に、試験実施主体から業務委託することで適正な実施が担保される。

(3)国内試験の対象者

国内で試験を実施する場合、①退学・除籍処分となった留学生、②失踪した技能 実習生、③在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者、④在留資格「技能実習」による実習中の者については、その在留資格の性格上、当該試験の受験資 格を認めない。

2.日本語能力水準及び評価方法等(特定技能1号)

(1)「日本語能力判定テスト(仮称)」

ア 日本語能力水準及び評価方法
(日本語能力水準)
当該試験は、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を判定す るために国際交流基金が開発・実施する試験であるところ、これに合格した者に ついては、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するもの と認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価する。
(評価方法)
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成31年4月から活用予定
イ 試験の適正な実施を担保する方法
同試験は、試験実施に必要な設備を備え、国外複数か国で大規模試験の実施実 績があり、かつ、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じることができる 試験実施団体に業務委託することで適正な実施が担保される。

(2)「日本語能力試験(N4以上)」

ア 日本語能力水準及び評価方法
(日本語能力水準)
当該試験に合格した者については、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定された者であることから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本 語能力水準を有するものと評価する。
(評価方法)
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回か ら2回実施(平成29年度)
イ 試験の適正な実施を担保する方法 同試験は30年以上の実績があり、また、国外実施における現地の協力団体は各 国の大学や日本語教師会といった信頼性の高い団体であり、主催団体が提供する 試験実施マニュアルに即して、試験問題の厳重な管理、試験監督員の研修・配置、 当日の本人確認や持ち物検査の実施等、不正受験を防止する措置が適切に講じら れている。

(3)業務上必要な日本語能力水準

上記1.(1)の試験に合格した者については、業務上必要な日本語能力水準を満 たすものと評価する。
ベトナム人特定技能生の調理者
ベトナム人特定技能生の調理者

第3 その他特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

1.特定技能1号外国人が従事する業務

外食業分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事する業務は、運用方針3 (1)に定める試験区分及び運用方針5(1)に定める業務に従い、上記第1の試験 合格又は下記2の技能実習2号移行対象職種・作業修了により確認された技能を要す る飲食物調理、接客、店舗管理の業務をいう。 あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:原 材料調達・受入れ、配達作業等)に付随的に従事することは差し支えない。 なお、外食業分野の対象は、以下の日本標準産業分類に該当する事業者が行う業務 とする。 76 飲食店 77 持ち帰り・配達飲食サービス業

2.従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性

「医療・福祉施設給食製造職種:医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を修 了した者については、当該技能実習で修得した技能が、食品衛生に配慮した飲食物の 取扱い、調理・給仕に至る一連の業務を担うという点で、1号特定技能外国人が従事 する業務で要する技能の根幹となる部分に関連性が認められることから、外食業の業 務で必要とされる一定の専門性・技能を有し、即戦力となるに足りる相当程度の知識 又は経験を有するものと評価し、上記第1の試験を免除する。

3.分野の特性を踏まえて特に講じる措置

(1)「食品産業特定技能協議会(仮称)」(運用方針5(2)ウ関係)

農林水産省は、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者により構成される「食 品産業特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)を組織する。 協議会は、構成員が相互の連携を図ることにより、外食業分野における外国人の 適正で円滑な受入れ及び外国人の保護に有用な情報を共有し、次に掲げる事項につ いて協議を行う。 ① 外国人の受入れに関する情報の周知その他制度理解の促進 ② 法令遵守に関する通知及び不正行為に対する横断的な再発防止 ③ 外国人の受入れ状況の把握及び農林水産省への報告 ④ 人材が不足している地域の状況の把握及び当該地域への配慮 ⑤ その他外国人の適正で円滑な受入れ及び外国人の保護に資する取組

(2)農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対する協力(運用方針5(2)オ関係)

特定技能所属機関は、農林水産省又はその委託を受けた者が行う一般的な指導、 報告の徴収、資料の要求、意見の聴取又は現地調査その他の指導に対し、必要な協 力を行う。

4.治安への影響を踏まえて講じる措置

(1)治安上の問題に対する措置

農林水産省は、外食業分野における特定技能外国人が関わる犯罪、行方不明、悪 質な送出機関の介在その他の治安上の問題を把握した場合には、事業者、業界団体 等に対して助言・指導を行うなど、必要な措置を講じる。

(2)治安上の問題を把握するための取組

農林水産省は、上記(1)の治安上の問題について、所掌事務を通じ、事業者、 業界団体等から把握するために必要な措置を講じる。

(3)把握した情報等を制度関係機関等と共有するための取組等

農林水産省は、上記(1)の治安上の問題について、制度関係機関等との間で適 切に共有するため、情報共有の手続を定めるなど、必要な措置を講じる。 また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがあると認める場合には、法第2条の 3第1項に規定する特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び運 用方針を踏まえつつ、農林水産省及び制度関係機関において、共同して所要の検討 を行い、運用要領の変更を含め、必要な措置を講じる。
ベトナム人特定技能生に調理を訓練
ベトナム人特定技能生に調理を訓練

第4 外食産業分野における特定技能ビザの運用方針のポイント

1. 外食産業における受入上限人数について

外食業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大5万3千人で、これが上限となります。 政府の試算では、外食業分野では向こう5年間で29万人の人手不足が生じるため、5万人程度の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。早めの着手が必要でしょう。

2. 在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務

外食業全般の仕事をすることができます。調理、接客、店舗管理すべてが対象とされています。 これまで、「調理」は技能ビザ、「店舗管理」は技術・人文知識・国際業務ビザ又は経営管理ビザを取得した外国人しか行なうことができませんでしたが、熟練した技能が無く、学歴が無い外国人でも、上記の試験に合格した者であればこれらの職に就くことができます。 「接客」の仕事で就労ビザを取得することはこれまでの制度では不可能でしたが、2019年4月以降は在留資格「特定技能1号」の取得が可能になります。なお、風俗営業法上の「接待」の業務は行うことができません。

3.特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件

全産業に共通の条件の他、外食業の会社(特定技能所属機関)に特に求められる主たる条件は以下のとおりです。 なお、全産業に共通の条件については在留資格「特定技能」総論をご参照ください。
1 食品産業特定技能協議会(仮称)の構成員となること
2 風俗営業法上の接待飲食等営業を営む営業所で就労させないこと
3 風俗営業法上の「接待」を行なわせないこと

4.特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態

フルタイムの直接雇用に限られ、派遣会社からの派遣は受け入れできません。
日本担当者: +84763367042